EO イーオー「ロバ肉のサラミを食べたことがあるよ」

サーカス団で芸をしていたロバのイーオーは動物愛護の名のもと、優しいパートナーと別れることになる。予期せぬ放浪の旅の途中、いろいろな人間に出会い良いことも悪いことも起こる。イーオーの目は淡々とそれを映し出す…。

©2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo

ポスターのEOから陽気な映画かと思っていたら、とんでもなかった。
ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督作品。

原題 EO

ポーランド語でロバの鳴き声、だったかな。

ロバの目を通して見る世界

サーカスで活躍するイーオーは、人間のパートナーであるカサンドラに優しくされていた。ところが動物愛護団体の抗議により、サーカス団から引き離されることになる。行き場を失ったイーオーは放浪の旅を余儀なくされる。
重い荷物を運ばされて犬に吠えられ、市庁舎の式典でニンジンのネックレスを首にかけられたり、厩舎で隣の白馬だけが丁寧に体を洗ってもらっていたり、負けたサッカーチームに暴力を振るわれたり。あるいは毛皮目的の狐の殺処分場で、里帰りする伯爵の息子に連れられて乗った列車の中で、EOの瞳はひたすら無垢でただ純粋になんのジャッジもせずに世界を映している。
道中、いいことも悪いことも、善人にも悪人にも出会う。主人公はロバだから台詞がない。なので、一番印象に残った台詞は列車の中で青年が言う「ロバのサラミを食べたことがある」かな。ロバってサラミになるのってびっくりした。どうやらイタリアやフランスではあるらしい。そうなのか…。

無用なる解放

EOは最後、牛の群れと合流する。放牧の後、牛舎に帰るところに紛れたのかと思っていたら、次第に屠殺場へ向かっているのだと分かったときの衝撃。動物保護団体の余計な抗議によって、EOは愛されていた人から引き離され、死期を早めたことになったわけだ。『無用なる解放』については常日頃考えているモチーフの一つなのだけれど、本当に個々人によって(今回はロバだけれど)自分を取り巻く世界への対峙の仕方は違うので、他人がどうこう口出しする問題ではないよなと思う。自らが解放されたいと願い、解放への行動をとったときのみ、解放は達成されるのだと考える。解放されるために他人の助力があったとしても、最初に自らの解放されたいという意志がなければ、その解放には意味がない。