ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男「こんな結婚生活、13年もよ!」

巨大企業デュポンを相手取り環境汚染問題を巡って戦い続けた弁護士の男の物語。
テフロンの裏にこんなひどい話があったのかと驚くと共に、孤軍奮闘する主人公に敬意を抱く一方で、妻の存在が非常に気になりました。

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主人公ロブを演じるのはマーク・ラファロ。『フォックスキャッチャー』の印象が強くて、この人出てくるとすぐ結局は死ぬんじゃないのか?と無駄に緊張してしまう。
ロブの妻サラにアン・ハサウェイ。昔のパーマも不思議と似合ってる。弁護士だったが結婚して専業主婦となり三人の男の子を育てている。

主人公は化学業界側の企業弁護士であったが、地元の牧場主から牛が大量死していると持ち込まれた資料からデュポン社による水質汚染を疑っていく。
ビジネス上つながりのあったデュポン社の幹部も最初はロブの質問に答えてくれるものの、次第に迷惑がる。パーティーの席でとうとう「田舎者め!」とキレた。人は相手を罵るとき、自分が一番言われたくない言葉を投げつけると言うけれど、この人は田舎者と思われたくないのだな、ふむ。

パーティーの帰り、車の中で妻サラは「あなたのせいで私まで恥をかいたわっ」と怒り泣きする。えーっそうくる?夫のフォローはなし?あなた元弁護士で立場分かるんじゃないの?と違和感が出始める。でもこれがアン・ハサウェイだからなんか言いそうだなあと思えるのは演技力?ってことにしておく。

で、ものすごい困難なところを不屈の信念でロブは真相を追及していく。
デュポンは大企業だからどこまでも自分に有利に、業界や国までも巻き込んでしまう。
一方でロブは弁護士事務所の中での立場は弱くなるし、給料も3分の1までになったり…。与えられている個室も納戸…とは言わないけれど狭苦しくてねえ…。

そんなとき朝食の席で、息子たちの学校のことを話題にしたら、突然妻が、私がなんとかやりくりしてるんだから家のことに口出さないでよって激昂。「あなたはずっと仕事ばかり。13年よ、こんな結婚生活」
重い…。そしてボディブローのように効く、これは。確かにロブは立派なことに取り組んでいるが、サラよく離婚しないよなあ…。

終盤、デュポンは40年間も汚染物質を流してきた事実を隠蔽していたことが判明するのだけれど、そこからが長い。因果関係の医学調査のために7万人分もの血液検査をするが、結果が出ないまま月日だけが流れる。裁判のコストはかかるし、住民たちにも突き上げられるしで、ある日ロブは倒れてしまう。
サラは死にそうなロブの手を握り涙ながらにあなたしっかりなんて献身的に看護するのだけれど、正直これがなかったら二人の絆はどうなっていたんだろうね…。

因果関係が判明してからも、デュポンは往生際が悪く、関係があると結果が出た疾患6つにつき個別に異議申し立てる戦略に出る。だが不屈の人ロブは「自分の身は自分で守るしかない」とひたすら裁判をこなしていくことに。結局デュポンは全件で和解金を提示。

大企業の黒を白と言わせる力を、そして簡単に懐柔されていく権力を、まざまざと見せつけられました。
そして立ち向かうロブの強さに敬服。
そしてやはりサラの内面の葛藤を知りたくなる、そんな作品でした。

お気に入りの台詞

お気に入りというか、印象に残ったもの3選。

  • 「こんな結婚生活、13年もよ!」という妻サラが吐き捨てた言葉。
  •  自社の工場労働者で症状が出ている人間を『レセプター』呼ばわりするデュポン社の内部資料。
  • 「こんな水を飲めって言うんですか!」というロブの法廷での叫び。