オードリー・ヘプバーン「彼の愛だけは信じられる」

原題"Audrey"は、ハリウッド黄金期の伝説的スターであるオードリー・ヘプバーンの知られざる素顔に迫ったドキュメンタリー映画。

Ⓒ2020 Salon Audrey Limited.

オードリー・ヘプバーンを嫌いな人はいないんじゃないか、と思える。
そんな伝説的スターについて、家族や伝記執筆者のインタビューやアーカイブ映像で構成されている。
ただドキュメンタリーなのかと思うと、バレエダンサーの踊るシーンが挿入されてきたりするので半端な印象。ダンスでオードリーの気持ちを表現していると監督は言うんでしょうが、正直要らない。どうせならオードリーの踊るシーンを入れてくれたらよかったのに。

スターのドキュメンタリーでよくあるのが、華やかな人生の裏には苦悩があったというパターン。苦悩の種類は大抵孤独。人間にはつきものと言われればその通りなのだけれど、どうしても既視感がある。
オードリーに好意的な人たちで製作されているはずなのに、どうしても彼女の光と影を描かないといけないのか。愛されているのに、幼少期父親の愛を得られなかったことがトラウマになって愛を欲し続けているとか、またそれか…というステレオタイプに感じてしまった。
「ロバートの愛だけは信じられる」だったかの言葉に象徴されるように、晩年、生涯最愛と思えるパートナーと出会いしあわせな人生を送っていたのだから、その部分にスポットライトを当てて、愛情をしっかり勝ち得たというまとめ方でもいいんじゃないのかしら。
もっと明るいサクセスストーリーだけのドキュメンタリーっていうのを観たいです。

以下、備忘録的にいくつか。
・『ローマの休日』の印象もあるのかもしれないけれど王女にぴったりの上品な美しさ。実は本当に貴族の家系だったとか。
・「美しさは他人が感じるもので自分では見えない。だから朝起きてから綺麗に見えるように全力を尽くします」だったか、印象的な言葉。あと成功も他人が感じるものだ、と言っていたな。
・二番目の夫アンドリアのことをナレーションが「イタリアの若者だったのです」と言っていたけれど、200人くらいの女性とパパラッチされたとか続いてなんじゃそりゃ??となる。普通のイタリアの若者だってそんなに遊ばないでしょ。