F1「また走った先で会いたい。会えるかな」
ソニー・ヘイズはかつて天才と呼ばれたF1レーサー。事故で無冠のままF1から離れ、レースを転々としていたが、昔の仲間に頼み込まれ最弱チームのドライバーとして30年ぶりにF1に復帰することになる。チームには才能ある自信家の若手ドライバーがおり、常識破りのソニーの走りに当惑し反発する…。

原題 F1: The Movie
邦題はほぼそのまま。
予告
ブラッド・ピット世代以上の男性に夢と希望を与えてくれる
後進に道を譲ったかに見えて、結局自分が総取りする展開が気持ちよい作品。
『リバー・ランズ・スルー・イット』のブラッド・ピットは、うわーっとちょっと声が出るほどの美青年だった。当時49ersのジョー・モンタナ似の人と付き合っていてブラッド・ピットは好みのタイプではなかったけれど、そういう人間ですら唸らせる俳優だった。今思えばジョー・モンタナも好みではなかったが、さておき。
ブラッド・ピットはたぶんずっとカッコいい。たぶん、というのは彼の作品を逐一追っていないから。久しぶりに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で見かけて、カッコよさを改めて認識した。
そんな彼が演じる落ち目のドライバーはやさぐれているけどカッコいい。一般人なら汚らしく見える姿も絵になっている。勝つための走り方は正攻法ではないので、スカッとはしないけれどそれすら経験値の高さと思えてしまう。
彼のことが鼻についてたまらないルーキードライバーのジョシュア。プライドが高く、ソニーを記者会見で高齢者扱いする。だが実際のソニーを見た母親は「年寄りじゃなくて、ハンサムよ」
ラストでも若手に花を持たせようとするのだけど、やむを得ずソニー自身が最後まで走り切ることになったり、理想の中高年の花道の飾り方を展開してくれる。なのでブラッド・ピット以降の世代の人間はかなりいい気分で劇場を後にすることができる。
帰り道、みなブラッド・ピットに自分を重ねているんだろうなあ。まあブラッド・ピットだから、というか彼にしか許されない現実なのだろうけど。
いくつか印象に残った台詞を。
「彼は飛んでいる」
途中、ソニーはピット・クルーでマシンの開発者であるケイトと恋仲になる。
彼女に「なんでここにいるのか」聞かれたとき「走るのが好き。全てが無音になって、そのとき自分は空を飛んでいる」と答えるシーンがある。
それに呼応して、レース終盤を走るソニーを見てケイトが言った台詞。
「また走った先で会いたい。会えるよね」
レース後、お祝いムードのチームから一人離れ出発しようとしているソニーがケイトに対し言った台詞。
これ、自分もソニーの立場ならきっと言うけど、言われた女性の半分くらいは「ふざけるな」って思うんじゃないかしら。なんとなくふわっと未来を思わせるけど、けして二人の未来を約束する訳ではないというね…。
ブラッド・ピットだから許されるのです。
あと、ケイトが部屋に来なかったら、何も言わずに出発していたのかな。しかしその方が、思い出としては美化されやすい気もするな。
「俺たち、世界一!」
表彰台でソニーがトロフィーを自分ではなく、オーナーに渡すように伝える姿が好きになりそうでした。
シャンパンシャワーの中、二人で叫ぶ台詞。
備忘録
運転している目線で走って、クルリと運転席が映るパターンが多かった。