ザ・ロストシティ「このギラッギラの衣装、私着る必要ある?」

サンドラ・ブロック主演・製作のロマンチック・アドベンチャー・コメディ。今の時代だからこその、あえて大金投入してハリウッド的な冒険ものをやってやるぞーっていう意気込みが感じられる。
スランプで引きこもりのロマンス小説家ロレッタ。なんとかシリーズ新作を完成させると、表紙モデルで大人気のアランとの宣伝ツアーに駆り出される。研究者気質のロレッタにはアランが顔ばっかりの中身空っぽ人間に見えている。息も合わずイベントは失敗。その帰り、ロレッタは何者かに拉致されるが、現場を見ていたのはアランだけで…。

©2022 Paramount Pictures.

サンドラ・ブロックとチャニング・テイタムと知ったときからどちらも好きなのですごく楽しみにしていた本作。
鑑賞日が6月27日となっているので、そろそろネタバレしてもいいかな。

原題 The Lost City

直訳すれば『失われた都市』で、ロレッタの書いている小説のタイトルです。

豪華キャスト揃い踏み

ロレッタ(サンドラ・ブロック)
スランプで引きこもり気味のロマンス冒険小説家。考古学者の夫を5年前に亡くしている。自身もかつて研究者だった。
アラン(チャニング・テイタム)
ロレッタの書く人気シリーズ小説の表紙モデル。イベントではシャツを破いて肌見せする等ファンサービスに手厚い。ロレッタの窮地にすぐさま駆けつけるが戦力にならない。助っ人として瞑想合宿で一緒だったトレーナーを呼ぶ。
ジャック(ブラッド・ピット)
アランの要請に応えるイケメントレーナー。元シールズで戦闘能力が高い。(だがすぐに退場する羽目に※後述)
アビゲイル(ダニエル・ラドクリフ)
大富豪一族。優秀な弟が家を継いだため、屈折している。見返すために莫大な資金を投入し『炎の王冠』を探している。ロレッタが学生時代古代文字を研究していたことを知り、自らが手に入れた地図を解読させようとする。

ブラッド・ピットの早すぎる退場、そして…

何に驚いたかって、イケメントレーナー・ジャックがロレッタ救出時、無双の強さを見せつけた後早々に頭を撃ち抜かれて退場となる。ええええってなる。なんとも贅沢なブラッド・ピットの使い方ではないの。
本作ではカメオ出演だったわけなのだけど、たぶんこの役ノリノリで引き受けたんじゃないのかなあと思わせる。そして予告でもうすぐ公開されるブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』でサンドラ・ブロックがちらっと出てたので、お互いに相手の主演作に出演したんでしょうね。こういう遊び心いいな。
そんな感じでブラッド・ピットの早すぎる退場を納得していたのに、なんとエンドロールでロレッタとアランが参加しているヨガ・クラスに何食わぬ顔で再登場してきて、またしてもええええってなるのだった。そのときの会話がこちら。
「私たちは脳の10%しか使っていないから、別の10%にただ切り替えたんだよ」
「で、あなた大丈夫なの?」
「100%大丈夫。つまり10%ってことだけど」

ギラギラとスパンコールがまばゆいジャンプスーツ

ロレッタが宣伝ツアーで着る衣装が、キラキラ眩しいスパンコール濃いピンクのジャンプスーツ。サンドラ・ブロックは難なく着こなすのが相変わらず素晴らしいのだけど、この衣装がちょっとした小道具になっている。
ロレッタ曰く「ちょっとフィギュアスケーターおたくみたいじゃない?」と最初難色を示すこの衣装。
編集者で親友のベスは「2時間の辛抱。借り物だから丁寧にね」と念を押す。
でも結局拉致されてその衣装のままジャングルへGO!
水に入ってもロレッタにはヒルが寄ってこないのは、このスパンコール効果なのか?
敵から逃げ回っているときに「なんで見つかるのかしらね」というロレッタ。
アランは冷静に「あなた、歩くディスコボールだからね」と返す。アランはちょいちょい真面目に返すんだけど、チャニング・テイタムのおとぼけ具合が最高に好き。本当、こういうとぼけた感じ、似合う人だなあ。
で、結構ボロボロになっても「借り物だから」「それ返す気?」とか言ってるんだけど、とうとう破って敵を撃退するのに使ってしまったー。あーあ。
ラストでボートで救出しに来てくれたベスに向かって大声で「ごめーん!ジャンプスーツダメにしちゃったー」と報告するのが律儀。

お気に入りの台詞

「ロレッタ、君はなんでも好きなことができるんだよ。君がもう書きたくないんなら、もう書かなくていい。でも自分の作品を低俗呼ばわりして、作品のファンまで貶めるのはやめろ」
アランはたまに核心を突くようなことを言う。
ロレッタはアランのことを端から煙たがっている。顔ばっかりの中身空っぽ男だって思ってる。確かにアランはファンサービスでシャツを破りまくるような人だし、「君は人間のミイラみたいだよ」とか言ってしまい「ミイラは人間だけど?」と返されたり、「シーッ、君はもう安全だよ」の台詞をやたら言いたがるような人なのだ。でもそれは決めつけでしかなくて、実は自分こそアランを外見で判断し内面を見ようとしていなかったことに気づく。
昔は金髪碧眼ナイスバディの女性は頭空っぽというステレオタイプで描かれることが多かったけれど、現代ではその逆も然り。なぜか美男美女かつ知的というパターンを人はあまり想定しないようなのだけれど、それは天は二物を与えずと思いたいだけなのかな。

備忘録としていくつか

・手押し車で逃げる爆破シーンはCGなしの一発勝負。
・「私の名前はアビゲイル・フェアファックス。アビゲイルってのはレスリーやビバリーと同じで性別中立な名前です」
・大人になってからのダニエル・ラドクリフの仕事の選び方には好感が持てる。『スイス・アーミー・マン』とかね。
・キャストも好きだし、掛け合いも軽妙。なのだけれど、何かが微妙に足りてない感覚が残るのが少々残念。でも好きか嫌いか問われれば、もちろん好き。
・サンドラ・ブロックはこれにて女優休業に入ったけれど、彼女のコメディはいつ観ても元気になるものばかり(たとえラジー賞でも)なので、またいつかスクリーンで見たいなあ。